冷凍サイクル

注射する時に消毒のためアルコールを腕に塗ると涼しく感じます。これはアルコールが蒸発しやすいためで、蒸発する時に気化熱を奪うので涼しくなるのです。このように蒸発によって冷却作用を行わせる物質を冷媒と呼びます。
冷媒を密閉配管の中に閉じ込めて、何度も利用しながら冷却しようとするときに冷凍機を用います。冷凍機の原理を成すものを冷凍サイクル(Refrigerating cycle)と呼んでいますが、これはどういうものでしょうか。

冷凍サイクルの仕組み


△冷凍サイクル

右図は冷凍サイクルを示した図です。真中に四角い輪があり、この配管の中を冷媒がグルグル回っています。

この輪の中に
圧縮機(Compressor)
凝縮器(Condenser)
膨張弁(Expansion valve)
蒸発器(Evaporator)
という4要素が入っています。

冷媒を圧縮→凝縮(液化)→減圧→蒸発(気化)→圧縮と連続的に状態変化させ、循環させて冷凍作用を行わせる。気体と液体の相変化の時の熱エネルギーを利用するために機械エネルギーで圧縮する。

気体冷媒を圧縮機で圧縮すると、分子がぶつかり合って摩擦熱により温度が高くなります。これを熱交換器に通してやると熱が外に放出され、冷やされて冷媒は液体になります(凝縮)。圧力が高いままで冷えた液体は細い管の中に入り、今度は圧力が低くなってきます。圧力が低くなると液体はより簡単に気化するので、これを熱交換器に通してやると蒸発して気体になります。このときに「気化熱」という熱を奪って、周囲を涼しくするのです。この気体をまた圧縮して…ということをグルグル繰り返すサイクルです。
凝縮器と蒸発器はともに「熱交換器」と呼ばれるもので、冷房の時は右側の蒸発器で室内の熱を吸って冷やし、左側の凝縮器でその熱を室外に排熱します。

ヒートポンプサイクル

冷凍サイクルというのは以上のように「冷媒」の気体と液体の相変化の時の熱エネルギーを利用するものです。冷媒はかつてフロン(国際的にはフレオン)が一世を風靡し、今でも使われていますが、今やオゾン層破壊と地球温暖化の悪玉となったため、新しい機器には使わないようにしようという流れになっています。フロンというのはもともと自然界には存在せず人工的に作られた物質で、冷媒としても洗浄用としても画期的な物質でした。塩素基の入った「特定フロン」がオゾン層破壊の元凶とされ、「代替フロン」への転換が進みました。しかし代替フロンも地球温暖化への影響があって、なるべく早く使用中止しなければならないとされたため、昔から自然界に存在するアンモニア、炭酸ガス(CO2)、プロパンなどの炭化水素を冷媒として使う動きが活発化しています。

冷凍サイクルというのは本来は「ヒートポンプサイクル」と呼ぶのが正しいと思われます。通常はこのサイクルが冷蔵・冷凍に使われることから始まったため、この熱を汲み上げるのを仲介する「熱媒」が「冷媒」と呼ばれることが多いのですが、熱には温熱も冷熱もあり、上図も凝縮器と蒸発器の使い方によって温熱も冷熱も取り出せます。すなわち、昔は「クーラー」と言っていたものが現在は「エアコン」が多く、切り替えによって冷房にも暖房にも使えます。クーラーは今では「冷専」、すなわち冷熱を取り出す専用機と言われています。またこのサイクルから熱交換器を通して外の配管に空気を通せば冷暖房や温風発生器、冷風発生器に、水を通せばエコキュート(給湯機)やチラー(冷水機)になるわけです。

さて、このサイクルに使われる主要素をまとめると、下記のようになります。

  • 1.冷媒

    熱の運搬役。圧力変化に伴い、状態変化(気化・液化)させることにより、熱の吸収・放出を繰り返す。

  • 2.圧縮機(コンプレッサ)

    低温・低圧のガス冷媒をピストン等で圧縮し、高温・高圧のガス冷媒にする(熱吸収)。

  • 3.凝縮器(コンデンサ)

    高温・高圧のガス冷媒から熱を放出させて、常温・高圧の液状冷媒にする(熱放出)

  • 4.膨張弁(エキスパンションバルブ)

    またはキャピラリーチューブ 常温・高圧の液状冷媒を、細孔(細い管)をくぐらすことにより、減圧と流量制御を行い、低温・低圧の液状冷媒にする(熱放出)。

  • 5.蒸発器(エバポレータ)

    低温・低圧の液状冷媒が熱を吸収し、低温・低圧のガス冷媒にする(熱吸収)。

p-h線図(モリエル線図)とエネルギー効率の指標

膨張弁の代わりにエジェクタを用いることで、従来の冷凍サイクルでの膨張弁で無駄にされていた有効なエネルギーの一部を回収することができ、冷凍サイクルの効率を高めることができます。エジェクタの後に気液分離器を置き、ガスは圧縮器へ、液は蒸発器へ導いて、熱交換した低圧ガスを再びエジェクタのバイパス口へ導くものです。
実際に冷媒の相変化と圧力の関係を示すためにp-h線図というものが使われます。


△p-h線図

右図はp-h線図、別にモリエル線図とも言いますが、冷凍サイクルを簡略化して表すと右のように逆台形のような形になります。X軸に比エンタルピー、すなわち冷媒1kgの熱エネルギーを置きます。
点①→②間は圧縮機での冷媒の状態の変化
点②→③間は凝縮器での冷媒の状態の変化
点③→④間は膨張弁での冷媒の状態の変化
点④→①間は蒸発器での冷媒の状態の変化
を示します。

この①→②→③→④→①→・・・を繰り返すのが冷凍サイクルというわけです。
現実にはこの逆台形のように直線的ではないのですが、わかりやすく示しています。p-h線図は冷媒毎に異なります。
日本冷凍空調工業会のホームページの検索ボタンよりサイト内検索しますと、「p-h線図上に冷凍サイクルを書く方法」という問題と回答があります。参考になりますのでご覧下さい。ここで出ている問題は、R22という従来良く使われていたフロンの場合で、蒸発温度が-15℃、凝縮温度が30℃、膨張弁前液温度が25℃、圧縮機への吸入ガス温度が-10℃の場合のp-h線図を書きなさいというものです。この条件のときは蒸発圧力0.296MPa(絶対圧力)、凝縮圧力1.192MPa(絶対圧力)、過冷却度5℃、過熱度5℃で、同じ条件を意味します。

この問題にしたがってp-h線図を書くと、図中の比体積v1と比エンタルピーh1、h2、h4が図上から読み取れ、冷凍機の性能計算ができるというものです。言葉自体がわからないという人は三基計装株式会社の技術情報の中の他ページを参照したり、前記のホームページをご覧になって勉強して下さい。
ヒートポンプは文字通り熱を汲み上げる装置です。ヒートポンプの利用は大気の熱を取り出したり、地下水ないし下水の熱を取り出します。
ガスエンジンヒートポンプというものがあり、ガスを使って冷房ができます。普通ガスというと温熱を思い浮かべますが、ヒートポンプを使えば冷熱も取り出せるのです。寒い時に空気から温熱を取り出すのは大変ですが、下水などは気温よりずっと温かい水ですから、ただ海に垂れ流すのはもったいない、下水の温度と大気の温度差を利用して熱を取り出そう、こういうことも実用化されています。都会の「地冷」と略称される地域冷暖房システム(DHC)などはこれを利用して大型ヒートポンプを設置しています。大気の温度に比べ変動が少ない地下の温度と空気の温度差を利用して、夏は冷熱を取り出し、冬は温熱を取り出す「地中熱利用ヒートポンプ」も実用化されています。またヒートポンプにはさらに優れた特性があります。使用した電力を熱に変換するだけでなく、外部の空気や水から熱を汲み上げるので、インプットした電力1単位に対して、通常3~6単位の熱エネルギーをアウトプットとして取り出すことができます。すなわち熱の増幅器みたいなもので、このアウトプットのエネルギーを、投入したインプットエネルギーで割ったものを成績係数(COP:Coefficient of Performance)と呼び、ヒートポンプのエネルギー効率の指標となっています。

冷媒についてはこの技術情報の中に「オゾン層破壊、地球温暖化防止という地球環境を守るために冷媒の変更が進んでいます」というページがありますので参考にして下さい。
日本でも最近の家庭用冷蔵庫は炭化水素(HC)冷媒が使われています。業務用大型冷蔵・冷凍庫などにはアンモニア冷媒の吸収式冷凍機が復活してきました。気化潜熱が大きい、安全面から可燃性や毒性がないことが冷媒の理想とすれば、これに当てはまるものがあります。それが炭酸ガス冷媒です。今やCO²冷媒は冷媒の主役に躍り出てきた感があります。ただフロンに比べて圧力が高いので、配管が銅ではなくステンレスになって高価になりますが、地球環境を守るためには仕方ありません。
炭酸ガス冷媒を用いたヒートポンプシステムを給湯に利用したのが「エコキュート」と呼ばれる製品です。東京電力、デンソー、電力中研が共同開発し、普及のために商標登録せず愛称としました。ですからどこのメーカーもエコキュートという名前で製品化しています。