産業用加湿器とは?

湿度制御に加湿器は不可欠です。加湿器は病院の耳鼻咽喉科や家庭、事務所で使われるモヤモヤ霧を発生するものが身近ですが、ここでは私達が業務で使用している産業空調用加湿器について勉強してみましょう。産業用と言っても例えばスーパーの生鮮食品売り場では加湿しているショーケースがありますし、フィルム製造ライン、製薬工場など静電気の発生する現場ではやはり加湿しているのを見かけます。オフィスビルでは梅雨時の除湿、冬場の加湿など、働く人の健康のための湿度制御が重要です。さて産業空調用加湿器にはどんな種類があるのでしょうか。

産業用加湿器の種類とその特徴、用途

種類 方式 特長 適用
気化式 加湿モジュールに空気を当てて水を気化蒸発 滴下浸透式と透湿膜式があり、気化蒸発の潜熱により空気温度は下がる。蒸発吸収距離不要なのでコンパクト型に適すがモジュール部面積大。エネルギー少なく空気清浄機要素もありケミカルフィルタ不要となる場合あり。制御応答が遅い。
  • ・ビル空調機
  • ・パッケージエアコン
  • ・全熱交換器
  • ・天吊型/天埋めカセットエアコン
  • ・ファンコイルユニット
  • ・外調機
水噴霧式 超音波式 高速応答、水粒径微小、常温なので冷却効果あり。静か。エリミネータ(除滴板)が必要な場合あり。水中ミネラルが白い粉となって出るが水道水でも可。振動子寿命あり。
  • ・パッケージエアコン
  • ・青果
  • ・苗
  • ・きのこ用
ノズル噴霧:
高圧スプレー式など
噴霧水粒径が大きいので蒸発吸収距離はかなり必要でエリミネータ(除滴板)必要。ノズル詰まり防止のため純水または軟水が好ましい。
  • ・大型空調機
蒸気式 ボイラまたは電力で100℃以上の蒸気を発生させる 電気式…電極式・電熱式・PTCヒータ式・赤外線式・パン型。空気温度は下がらない。蒸発吸収距離は若干必要。エネルギー多消費。制御しやすい。スケール(水垢)が溜まる。
  • ・空調機
  • ・パッケージエアコン
  • ・全熱交換器
  • ・ダクト組込み用

産業用加湿器をどのように使い分けするかというのは用途に応じて重要な設計判断になります。上表をご覧になればご理解頂けるかと存じますが加湿方式には大きく分けて2種類あり、

  • ①水加湿…気化式、水噴霧式

  • ②蒸気加湿…蒸気式

です。

水加湿

気化式は一言で言えばエア・フィルタに水を含ませて空気を通すものです。したがって乾いた空気がこの膜を通過することによって湿潤空気となりますが、この過程で気化熱によって空気が冷却されます。場合によっては後段で再熱する必要があります。
エネルギーを使わないので究極の省エネ方式であり、空気を清浄化する要素もあって一石二鳥のため最も多く採用されている方式です。ただし原理的に急激に加湿したりすることはできませんので、一般空調用途に用いられ、精密空調には用いられません。
クリーンルームでは外気を空調する外調機に採用されます。

水噴霧式でも超音波式とノズル式の違いは、超音波式が日本で開発されたもので、超音波振動子で水を霧化するために手が濡れないほどの微細粒子を発生し、水道水OKであるのに対し、ノズル式は水を加圧しノズルから噴霧するため霧の粒径が大きく手が濡れます。この霧が蒸発し空気中で見えなくなるにはノズルからの距離が必要であり、空気調和機に採用するとエリミネータ(除滴板)が必要になります。超音波式は微細な霧が美しくきめ細かいので野菜ショーケースなどに使われて野菜をおいしそうに見せます。
三基計装株式会社では接木苗養生室などに採用しておりますが、胴体をカットされて、異なる上半身と下半身が接木(つぎき)された、言わば「瀕死の赤ちゃん」である苗を、接合され元気になるまで優しい温度、充分な湿度の中で、無風状態で養生させるという環境作りは空調にとって大変難しい課題でした。超音波式加湿器は苗全体を包み込み、葉面に結露しないこと、冷房効果があるため輻射暖房とのマッチングが良いこと、穏やかなきめ細かい霧がゆったりした空気対流を作ることなど、目的にピッタリの加湿器でした。
水道水が使えてスケール(水垢:水中の金属分、塩分などが固化してベットリつくもの)の心配が少ないことがメンテナンス上のメリットであることも機械に不慣れな農家には最適です。きのこ栽培にもこの加湿器が使われています。

蒸気加湿

蒸気式は水を加熱して沸騰させ蒸気にして空気の中に放り出すもので、蒸気は一瞬にして空気に混じり気化熱が無いので冷却効果がありません。したがって温調された空気の加湿には制御面から見れば最適ですから精密温湿度空調には大抵これが用いられます。ただしエネルギーを要しますので省エネには反しています。また水を加熱する過程で塩分が残りスケールが溜まると言う欠点があります。
このために水処理フィルタ(ろ過器)や純水器を設置しますと、このメンテナンス費用が馬鹿になりません。なお赤外線式やパン型などは純水が良いのですが電極式は水中に電気が流れる必要があるため純水では使えないという点などに注意が必要です。なおこの加湿器は冷却除湿した空気を加熱制御して温調した空気に加湿するものですから、送風機で空気を引っ張る最終段に配置します。なおかつ蒸気が空気中に混じり込むためにはある程度の距離が必要ですから、無駄なように見えても加湿器の後段には空間が必要です。
空気清浄化のためにHEPAフィルタを付ける必要があるときなどは、十分な距離をとらないと水滴がHEPAフィルタの濾材に結露して、まるで気化式加湿器が後段にあるような形となり、圧損により思った量の空気が流れないなどという事態になりますので、加湿器の配置や空間設計は大変重要な要素となります。