温湿度制御と精度について勉強しましょう

温度制御についての勉強をしたところで、今度は温湿度制御はどうなるかを見てみましょう。湿度については別のページに掲載しました。

加熱温度制御だけであれば、通常それほど難しいことはありません。熱源が電気であればヒータへの電磁開閉器、SSR、SCR等の制御、ガスやオイル燃焼であればバルブの開度制御を行います。
このような調節計の手足となって実際に制御対象系への出力をする機器を操作端(アクチュエータ)と言います。
空調制御では加熱だけでは制御できないので冷却手段が必要になります。手っ取り早いのは水で冷却する(熱交換器=冷却コイルに冷たい水を流し、温まった水を冷却塔=クーリングタワーで再び冷たくする)ことですが、それだけでは出来ない場合は冷凍機やヒートポンプチラーを用います。
さらに湿度が制御目的に加わると一段と制御が大変になります。湿度を制御したいときは大抵温度も制御したいという場合が圧倒的です。圧力が一定だとしても温度が少し変っただけで湿度は大きく動きます。すなわち温度と湿度は、どちらかを制御しようとすると他方に影響するという、あちら立てればこちらが立たずということが起き易い複合制御なのです。
低湿度の制御をするにはまず除湿しなければなりません。冷凍サイクルによる除湿で間に合えば良いのですが、除湿機を使うとなると高価になります。湿り空気線図とにらめっこして設計します。

センサの選定

温度検出器(Temperature sensor)

工業用温度センサとして一般的なのはサーミスタや熱電対、白金測温抵抗体(Pt100Ω at 0℃)です。
熱電対は異種金属を接合すると、温度変化に対応してその金属間に熱起電力が生じる(ゼーベック効果)というものです。
一般的に、温度が高くなるにつれて発電する電圧が高くなります。ただしこの起電力は微弱なので、受信計器はその入口段にプリアンプを設置してこの微弱電位差を増幅し、さらに非線形な特性をリニアライズテーブルに放り込んで温度に変換します。熱電対は1400℃ぐらいまで測れますが、常温付近の温度測定では良い精度が得られません。熱電対の種類は高温用から順に下記のようなものがあります。

名称 2種金属素材 使用温度範囲 適用
B 白金・ロジウム30 - 白金・ロジウム6 600~1500℃  
S 白金・ロジウム10 - 白金 0~1400℃  
R 白金・ロジウム13 - 白金 0~1400℃ 安定性良く、酸化性雰囲気○、
還元性雰囲気×、水素・金属蒸気に弱い
N ナイクロシル - ナイシル 0~1200℃  
K クロメル - アルメル -200~1000℃ 直線性良く、酸化性雰囲気○、
還元性雰囲気×、金属蒸気に強い
T 銅 - コンスタンタン -200~300℃ 熱起電力が大きいので低温における精度が良い
J 鉄 - コンスタンタン 0~600℃  
E クロメル - コンスタンタン -200~700℃  

上記以外にも用途別に各種熱電対がありますが、JISで略称決まっているのは上記8種です。この中で一般によく使われるセンサは、1000℃以上ではR熱電対、1000℃以下ではK熱電対、300℃以下ではK熱電対またはT熱電対です。

サーミスタ(Thermistor)は、熱に敏感な抵抗体(Thermally Sensitive Resistor)のことを指します。赤字部分をつなぎ合わせた造語というわけです。サーミスタは,温度の変化につれてその電気抵抗値がきわめて大きく変化します。温度上昇とともに抵抗値が増加するサーミスタを「PTCサーミスタ」と言い、逆に抵抗値が減少するサーミスタを「NTCサーミスタ」と言います。単にサーミスタと言った場合は、一般にNTCサーミスタを指します。Mn、Co、Ni、Fe、Cuなど遷移金属酸化物の数種を原料に焼結されたファインセラミックス半導体の感熱素子です。使用温度範囲は-50~300℃(高温用は500℃)で、小型で安定かつ高感度のため,家電製品、OA機器や産業機器など広範囲に、かつ大量に使われています。その用途は、電子レンジや炊飯器などの調理家電から、ジャーポット、給湯器、温水便座、冷暖房機、複写機、プリンターなど多岐にわたっており、例えば自動車などには数多くのサーミスタが使われています。安価だから大量に使われるという面もあります。三基計装株式会社は施設園芸ハウスの温度制御を行う制御器を製造しておりますが、温度センサとしてはサーミスタを主とし、精度を求める場合は白金測温抵抗体を使います。

白金測温抵抗体の素材の白金=プラチナは貴金属ですからセンサとしては高価ですが、安定した金属で高精度であることから、精密空気温湿度制御ではほとんどこれが用いられます。原理は0℃における電気抵抗値が100Ωの白金を検出素子としてその周囲を絶縁体で覆って保護管に入れたものです。温度に比例して電気抵抗が変化するので、ここに微弱な一定の電流を流してその電位差(電圧)を計測します。ただし電気抵抗のある物質に電流を流しますと電流の2乗×電気抵抗値というジュール熱が発生しますので、これが真の温度に加算されて誤差が発生する可能性があります。そこで流す電流は微弱としなければなりません。かといってあまりにも電流値が少ないと電圧も小さくなるので受信計器の入力アンプのところでS/Nの問題が出てきます。すなわち信号(S)とノイズ(N)の区別がつきにくくなるのです。現在は2mA、1mA程度の定電流を用います。これですと0℃でオームの法則(V= I × R)により電圧は200mV、100mVですからS/Nの問題は出ません。

白金測温抵抗体は1981年から100℃で139.16Ω、すなわち温度係数1.3916とされてきましたが、1989年IEC(国際電気標準)の1.3850と整合をとる形となりました。国際会議で日本は英独仏に負けたわけです。実は日本のPtセンサは白金の純度が高かったのです。100℃で0.66Ω抵抗値が高いということは約1.5℃の差となります。しかし受信計器が広く普及していたため、日本ではしばらくPt100Ω(1.3850)とJPt100Ω(1.3916)という2つの規格が並存することになりました。その後1997年に定義定点が違っていたということでPt100Ωは温度係数1.3851に訂正されました。0.0001大きくなったのです。これを機に日本でもPt100Ω(1.3851)に統一されることになりました。
また白金測温抵抗体を用いるときは導線抵抗による誤差を避けるために3線式(A-B-B)の結線が多く使われます。さらに高精度を必要とする場合には4線式も用いられます。4線式にするとほぼ完璧に誤差を除去できます。

白金測温抵抗体にはクラスAとBがあり、A級測温抵抗体温度許容差(A-class resistance thermo bulb permitted error degree)は±(0.15+0.002t)℃…±0.15℃ at 0℃、±0.2℃ at 25℃です。0℃における誤差から、昔はA級を0.15級と言いました。B級は±0.2℃ at 0℃です。実際には製造した中から検査してふるい分けします。今後クラスAA(より高精度)やクラスC(より低精度)という白金測温抵抗体が出てくる予定です。

湿度検出器(Humidity sensor)

湿度測定方法には

  • ①秤量法…水蒸気量を直接測定する

  • ②熱力学的平衡温度測定法
    …乾球温度(Dry Bulb)と湿球温度(Wet Bulb)の差、すなわち水の気化熱を利用する方法でもっとも良く使われる。アスマンや気象庁型通風乾湿計が有名。露点計ではGEのものが有名

  • ③空気の物性測定による方法…熱伝導率式湿度計等

  • ④吸湿性物質の物性測定による方法
    …毛髪式(伸縮を信号変換する)、電子式(電気抵抗式と静電容量式がある。いずれも感湿方法は高分子膜かセラミック)

  • ⑤その他…限界電流式湿度計

などがあります。

乾湿球式湿度センサは水を用いるところに難点があります。その意味で工業的には電子式湿度センサがメンテナンス上もっとも好ましいものです。ただし、センサは常に大気の雰囲気に露出(曝露)されますので、測定雰囲気の有害ガスなどによって性能が劣化する場合もあります。特にアセトン系有機溶剤は劣化を促進する物質です。また結露した場合容易には正常指示に戻りませんので、高湿度でも使用はできますが正しく測定できているかどうかは疑問です。高分子センサは電子回路との相性の良い小型センサで、電気抵抗式と静電容量式があります。電気抵抗式は安いのですが特性がノンリニアで10%RH以下は計れないという欠点があります。しかし測定範囲が限定されていて低湿度に留意不要の場合は安価なだけに採用しやすいものです。静電容量式は精度が良くリニア特性で0~100%RHが測定でき、応答速度が速いので工業用としては最適ですが、製造の難しさ、歩留まり上、価格は高くなります。セルロース系の親水性高分子膜をサンドイッチして両端に電極を付け、水分の吸収・放出に伴う誘電率変化から雰囲気との相対湿度を測定します。電極は極めて薄い金属の蒸着膜です。

調節計の選定

温度調節計(Temperature controller)

温度調節計は制御精度(Control accuracy):±0.1℃のものを選びます。最近の汎用型あるいは高級型温度調節計のセンサ入力は大概フルマルチレンジ入力(熱電対、測温抵抗体、直流電圧、直流電流)仕様になっております。サンプリング周期は速いほうが良いに決まっていますが、0.1秒でなければならぬということはありません。調節仕様はPIDオートチューニングは当然として、設定温度が幅広い場合はPID値を複数持つものを選びます。空調の場合はほとんど制御したい温度が決まっているので、このあたりを気にする必要は少ないのですが…。ただしオーバーシュート防止機能(ファジィ制御等)は欲しいところです。
外部接点入出力は、PLCとの連動コントロールなどに使用します。例えば調節計の警報機能を用いて目標温度偏差内に到達したことをPLCに伝えたり、実際に警報を伝えたり、またPLCから調節計に対し制御目標値(SV)やPID定数、プログラムパターンの選択を指令したりするのに用います。伝送信号出力は、設定値や測定値などの伝送が必要なときに使います。多くは記録やモニター用です。出力仕様はアクチュエータに合わせてオンオフパルス形、電流出力形、SSR駆動パルス形、オンオフサーボ形、電圧出力形など各種から選択します。通信機能はコンピュータやPLCとの通信によって、設定と監視が双方向で行えるようにするものですが、特にPLCのソフトウェアで調節計の通信を管理しようとしたときは、多くのプログラム容量を必要としますので注意が必要です。

湿度調節計(Humidity controller)

基本的には温度調節計と同じですが、センサとアクチュエータが異なるので、入出力仕様を適切に選択します。制御精度は±0.1%RHのものを選びます。
温度と湿度の制御は通常独立して制御します。加熱と冷却、加湿と除湿をコントロールしつつ安定した制御をめざします。加熱は電気ヒータ(空調ではフィン式シーズヒータが多く用いられる)や温水コイル(熱交換器)、加湿は加湿器(様々な種類があり、特にスケール=水垢に要注意)を用います。冷却には冷水コイル(熱交換器)や冷凍機、除湿は通常冷凍機によって行いますが、特に低湿度の場合や冷凍機だけでは制御できない領域になる場合は除湿機を用いることがあります。

温度と相対湿度の関係


△図1.相対湿度曲線

図1のように同じ温度で水分量が増えれば当然相対湿度が増えますが、一定容積、一定圧力の空気中に含まれる水分量が変わらなくても空気温度が下がると相対湿度が増えます。そしてこれが100%RHに達したとき、すなわち露点温度になると結露します。空気調和における通常の温湿度(20℃、50%RH)での相対湿度誤差(Relative humidity error)は、±1℃の温度差が±3%RHの湿度差に相当します。したがってわずかの温度差がその3倍の湿度差となってしまうため、湿度制御とはいかに安定した温度制御を行うかがポイントになります。

誤差と再現性


△図2.絶対精度と相対精度

湿度センサとその変換器の仕様に注目したときに「センサの測定方式」、「測定範囲」や「精度定格」、「相対湿度温度係数」、「応答時間」といった項目があります。ここでいう「精度」とは検出器相対湿度許容差のことを指し、たとえば±2%RH(0~90%RH)というように表示されます。ただし『湿度制御』を行うときに、精度(accuracy)とは通常、絶対的確度を指します。これは、検出器の誤差、変換器の誤差、調節計の誤差を重畳したものです。これに対して再現性(reproducibility)とは相対的確度を指します。これは制御安定性(control stability)と密接に関係します。図2にこの関係を示します。

点精度と分布精度

「精度」と言ったときに、ある1点における精度なのか複数点における分布精度なのかは重要なポイントです。普通は1点精度を指しますが、空気は常に流れており、ある立体空間の各所で計測したときにバラバラの温度や湿度を示すというのはよくある話です。
1点精度はクリアできても分布精度が納まらないなどというのが普通であって、分布精度を高めるというのが高度な技術となってきます。この点だけは我々メーカーもお客様も、発注~設計~製作~納入にあたっては、くれぐれもあいまいにせず、きちんと取り決めをいたしましょう。分布精度を高めるにはそれなりに費用もかかります。計測点の位置を床から○m、側壁から×m、奥から△m、全部で何点とはっきり決めます。

計測と制御と監視

センサで計測し、調節計で制御演算し、アクチュエータで出力するというのが制御系のループになります。人間で言えば、見たり、聞(聴)いたり、匂いを嗅いだり、味わったり、触れたりという、人間が本来持つ五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)がセンサです。頭が調節計で、アクチュエータが手足です。”温度制御について勉強しましょう”のコーナーPID制御について説明しましたが、人間の頭脳は知らず知らずのうちにPID制御を行っています。加えて人間には「学習」という特性があって、PIDの定数を対象ごとに蓄積して行けます。本当に素晴らしい生き物です。しかしながら人間には、「疲れる」とか「怠ける」という特性も別途あり、任せて安心というにはちょっと不安な面もあります。

制御を行うには計測しなければならず、空調制御では白金測温抵抗体を制御用センサとして用いるのが普通です。しかし単に1点の制御温度のみの記録ではなく、室内温度分布などを記録計に書かせたいというニーズがあった場合、センサが複数必要なのでコスト面の要求からT熱電対を用いるという場合があります。三基計装株式会社ではお客様への引渡しデータが必要な場合など、このようにして計測しますが、安価なセンサという意味では被覆熱電対というものを使用します。これは熱電対素線にビニール、エナメル、フッ素樹脂、ガラスウール、アルミナ繊維、セラミックなどを被覆したりコーティングしたものです。
また安全のために監視機能フェイルセーフ機能を付加することが重要です。調節計の警報機能を用いるのはもちろんのこと、独立した警報計を設置して監視を”分散”させることが肝腎です。また過負荷防止や過熱防止、漏電遮断などはインテリジェンスを持たない機器で機械的に行うことが望ましいと言えます。さらに停電のような事故のときに、アクチュエータが安全側に働くような仕掛けを組むことも重要です。

このように「計測」と「制御」と「監視」は三位一体で構成すべきであり、これを構築することこそ「計装」と言えるものです。これでお分かりのことと思いますが、弊社は「計測」と「制御」と「監視」という三つの基本を計装する会社なのです。